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幸せについて(小説)

2012年03月17日

街中で君を見つけて、今日はすごくツイているって思った。
声をかけようか迷ったけど、自然と足は彼女の方へ向いている。
もう少しで彼女にたどり着くと思ったとき、僕の足はびたりと止まった。

彼女の隣に男がいる。
僕の知らない男。

嬉しそうに笑う彼女から目が離せなかった。
何やってんだろう。
急に何もかも馬鹿らしくなって、彼女に背を向け歩き出した。
間が悪いとはこのことで、僕の名前を呼ぶ彼女の声が聞こえる。
「木村君」
ったく、街中でそんな大声出すなって。
聞こえないふりして逃げようかと思ったけど、思いきっり不機嫌な顔をして
振り返った。
「なんだよ村上。んなデカイ声だすなよ。」
「だって何度呼んでも返事しないんだもん。」
拗ねるように僕を見上げる。
「あのなぁ。」
そう言いながら、ちらっと隣の男を見る。
少し幼さが残る日に焼けた顔。
まぁ、悪くはない。
そこまで考えて、情けなさが込上げてきた。
それを悟られまいと、忙しいからって手をひらひらさせ背中を向けた。
それが今の精一杯。

格好悪い。

その言葉は今の自分にぴったりだ。
消えてしまいそうな思いを引きずりながら歩き出した。
「なぁ、おまえ時間ないの?」
そんな僕の背中に男の言葉が投げかけられる。
面倒臭そうに、それでいてどこか自身あり気な声で。
その態度に少し頭に来たけど、ここで怒ったら負けだ。
「何で?」
余裕の顔を見せて、男を見据えた。
「かおるの買い物長いんだよ。」
かおる。
その呼び方に体が熱くなるのがわかる。
「貴志。あんたねぇ、お小遣いで買収された身でしょう。
 文句言わないの。」
彼女は貴志と呼んだ男を軽く睨み付けた。
今どんな顔してんだろう?
彼女の言葉に頭が混乱する。
「もぉ。あっ、似てないでしょ。あたしの弟。」
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか彼女が極上の笑顔を見せた。
弟・・・。
その言葉にこのもやもやとした気持ちがすごく馬鹿らしくなって
笑い出した。
なぁに?って怪訝そうな顔をする彼女を尻目に弟が僕に荷物を押し付ける。
「交代な。」
って意味ありげな笑みを残して走り出した。
そっと僕に耳打ちして。

取り残された2人で顔を見合わせて、同時に吹き出した。
「しゃあねぇ、お茶でもするか?」
僕の提案に彼女が小さく頷く。

・・・かおる、ずっとおまえの話ばっかなんだもん・・・

彼の言葉を頭の中で何度も繰り返す。
こんな天気のいい日は自分の気持ちに素直になるのも悪くない。
彼女に伝える言葉を考えながら、僕らは歩き出した。

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