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好き・・・?(小説)

2012年03月19日

「俺、オマエのこと好きだから。」
学校からの帰り道。
途中までは部活のみんなと一緒で、途中からあたしとあいつは2人になる。
同じ方向から来てるのはあいつだけで、同じ部活で帰る時間も一緒。
なんとなく、自然に一緒に帰るのが当たり前になってた。
「・・・。なに冗談言ってんの。」
声が上擦ってるのがわかる。
それが妙に恥ずかしくて、何もなかったように歩き出した。
「・・・?」
少し歩いてあいつがついてないのに気が付いて振り返った。
「どうしたの・・・。」
結局こんなありきたりの言葉しか思いつかない。
あいつの瞳が真直ぐあたしを捕らえる。
あたしも視線を反らす事ができず、ただ見つめていた。
ほんのちょっとの間だけど、すごくすごく長い時間に思える。
「オマエは冗談だって思うのか。」
あたしは動くこともできなかった。
その少し低くてしっかりした声に感情は感じられない。
いや、感情を一生懸命押し殺した声だ。
自分が言った言葉がぐるぐると頭の中で繰り返される。
「あの・・・。」
何か言いたいけど言葉が出てこない。
傷つけた。
自分の気持ちを伝えてくれた言葉をあたしはなにもなかったコトにしようとし
たんだ。
自分のバカさ加減が情けなくて、零れそうになる涙をぐっと堪える。
泣きたいのはあたしじゃない。

本当はすごく嬉しかったのに。

「悪かった。」
そう言って、何もなかったように歩き出した。
あたしの横をすれ違うあいつの手を思わず握り締めた。
「なっ・・・。」
驚きと少し怒ったような顔であたしを見る。
「こっち向かないで。まっすぐ前みて歩いて。」
お願いだから。
最後は声にならない言葉を口にする。
ちょっと戸惑いながら、それでもあいつは手をつないだまま歩き出した。
斜め後ろから少しだけ横顔が覗く。
「あの、ごめん。冗談なんて思ってないから。」
黙って聞いてくれることが今は素直に嬉しい。
「少し、いやかなり驚いた。それが正直なとこで、なんて言っていいかわから
なくて・・・。」
「なぁ、並んで歩いていい?」
少しだけ顔を向けるあいつに、もう少しこのままがいいと首を振る。
つないだ手が何故かじんじんと痛い。
でもそれは嬉しい痛みだ。
「ずっと友達だって思ってた。うん・・・、違うな。そう思うようにしてた。」
「なんか・・・、わかんねぇ。」
いいの、わかんなくて。短く返事をして話を続ける。
「一緒に帰る時間がいつも楽しくて、嬉しくて。ずっと続けばいいって思って
た。あたし・・・、好きだから。」
「あぁっ・・・。」
「あたし速水のコト好きだから。だから、ずっと友達でいようって。そう思う
ことにしたのに・・・。速水があんなこと言うから。」
ダメだ。涙が止まらない。
それでも言葉を続ける。
「と、友達なら、さよなら・・、なんてないから。ずっと・・、友達でいられ
るから・・・。キレイ事かも・・、しれないけど、失くしたく・・・、なかっ
た・・・。」
ふわっとした温かさで包まれた瞬間、涙が止まらなくなった。
「もうなんも言うな。」
子供みたいに泣きじゃくるあたしの頭を、何度も何度もやさしく撫でる。
「ごめん。と、ありがとう。」
すごくすごく優しい言葉があたしの心に響く。
ゆっくりと顔を上げる。霞んだ視界に速見が映った。
「すごく嬉しい。」
あたしの頬に乗せられた手が静かに涙を拭う。
「けどごめん。」
その言葉にすごく不安になって速水を見つめる。
「なん・・・で?」
「オマエがそんなに考えてんのに、ガキみたいに気持ち押し付けて、1人で
怒って。ホント情けない。」
「そんなことない・・・よ。」
「なぁ、友達とか恋人とかそんな枠ってなんか意味あると思うか?」
「えっ・・・。」
一瞬何を言われてるかわからなかった。
「なんつーかさ、俺はオマエのコトが好きなの。それだけなの。それが全て。
その気持ちを恋人とか枠に入れて、おざなりな気持ちにしたくない。あー、何
言ってっかわかんねぇなぁ。」
空いてる手で頭をぐしゃぐしゃと乱暴に掻き乱す。
「いつか・・・、気持ちが離れる時が来るかもしれない。けどな、だからって
今の気持ちがなかった事になんか出来ないんだよ。俺は何年たっても、今オマ
エを好きだって気持ちを忘れたりしない。俺はまだまだガキで将来とか一生と
か約束なんてできない。けどな、いい加減な気持ちで言ってる訳じゃないから。」
その一生懸命の言葉がすごく嬉しかった。
勝手に枠を作って、逃げていたのは自分だ。
子供なのは自分の方だ。
情けなさと嬉しさがごちゃ混ぜになった気持ちが止め処なく溢れてくる。
「なっ、なんで泣くんだよ。」
あわてたようにあたしを見つめる。
そして優しい笑顔と共にあたしに手を差し伸べた。
「これからも一緒に歩いてくれるか?」
そう言った速水の手を取り、今度は並んで歩き出した。

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