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君が隣にいること(散文)

2012年03月21日

「結婚ってどんなもんかしてみる?」
あいつはズルイと思う。
その自信たっぷりの笑顔で、そんなセリフをさらりと言ってのける。
あたしは悔しいけど嬉しくて、でもそんな気持ちを知られるのは悔しくて赤い顔を隠すように背を向けた。
YesかNoか考えなくても決まってる。
「あたし料理下手だよ。」
「知ってる。」
「掃除も苦手だよ。」
「確かに。」
「仕事は続けるよ。残業も出張も今まで通りだよ。」
「いいよ。」
「たまには旅行連れてってくれる?」
「もちろん。」
ずっと背を向ける彼女の顔が見たいと思った。
「もし結婚がいいものじゃなかったら?」
「それはない。オマエがいるから。」
ふわりと後ろから抱きしめられた。
やっぱりズルイと思う。
「もしNoって答えたら?」

その言葉できゅっと体の奥が締め付けられる。
彼女の本心じゃないって分かってるのに。
不安をかき消すように、彼女をもう一度しっかり抱きしめた。
「ん、ちょっと苦しいよ。」
ごめん。そう言って僕が力を緩めたのと同時に彼女が僕に顔を向けた。
「後であたしのこと要らないって言ってもダメだよ。」
彼女がとびきりの笑顔を見せる。
彼女のこの笑顔には叶わない。情けないけど、涙が出そうになった。
「それはYesでいいの?」
「ばか。」

変わらない気持ちってのはないかもしれない。
でも、これだけは分かるんだ。
彼女が隣に僕がいること。それが僕にとって一番大切だって事。

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