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たばこ(散文)

2012年03月23日

あの人と離れて五日目。
今度の出張は三週間。
なのに忙しいとかで電話もかけてこない。
あたしはいたずらに携帯を眺めては、放り出す。
寂しいとか不安とかよく判らない気持ちがぐるぐると
頭の中で回ってる。
ふとあの人が残していったたばこが目に入って、一本
吸ってみた。
たばこなんか吸ったこともなくて、一息ついて咽かえった。
同じ匂いがしたら落ち着くかもなんて考えた自分が情けない。
ただ苦くて、苦しくて、涙が出た。
会えないだけなのに、たった三週間なのに、自分がこんなに弱い
ってことを思い知らされる。
もう一口吸って、灰皿にたばこを押し付けた。
涙が止まんなくって、久しぶりに声を出して泣いた。
もう子供じゃないのに、涙が全然止まらない。
そんなに涙が出る自分にびっくりして、また涙が出た。
さっき放り出した携帯を握り締める。
あたしバカだ。
やせ我慢して、一人で泣いて、本当にバカだ。
あの人の電話番号を表示させる。
通話ボタンを押そうとして、着信音が鳴ってあわててとった。

「元気か?」
そんな一言がすっごく嬉しくて、でもなんか悔しくて素気ない
返事をした。
自分でも可愛くないとなって思って、いい直すか迷ってると
「泣くなよ。」って言われてドキッとした。
「俺のいないとこで一人で泣くなよ。」言うの。
あぁ、この人にはかなわないなって思う。
「声を聞いたからもう大丈夫。」
自分でも驚くくらい素直に笑顔が出る。
「ばか。」
その言葉がすごく愛しい。
聞いたことないくらい優しい声がまだ頭の中で響いてる。

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